リパワリングの真実

【本記事のまとめ】
・「リパワリング」が本来の意味で使用されていない
・来年から「増強」が可能となるため、「改良」と区別して考える必要がある

【詳細】

FIT開始に伴い建設された発電所も運転開始から10年が経過し、PCSの交換寿命を迎えていることから、業界内ではPCSを最新機種に交換する「リパワリング」の話題が盛んですが、実は本来の意味での「リパワリング」ではないことはご存知でしょうか。

そもそも、リパワリング(repowering)は「出力増強」を意味し、

・銘板出力や定格出力の増加

を伴う改造を指します。
この事例のように火力や水力の発電機を現状より大容量のものに交換することが「リパワリング」です。

つまり、PCSを「同一出力の高効率な機種」に交換しても、定格出力は変わらないため「リパワリング」ではないのです。
では何なのかというと「リバンピング(revamping)」で、意味は「刷新」や「改良」です。

欧州のO&Mガイドラインでも機器の大幅交換において

・「発電所の公称電力を増加」がリパワリング
・「発電所の公称電力は変化しない(僅かだけ変化)」がリバンピング

と定義されています。

上記ガイドラインは英語ですが、ソリステラ作成のガイドライン[5.5項 性能改善]にて引用、整理していますので、ご参照ください。
また、環境ビジネス掲載の記事(要有料会員登録)でも2つの違いが解説されています。

本来の意味でのリパワリングは以下のような事例です。

・PCSや変圧器は100%の出力よりも低い出力で最大の効率となるため、定格容量をより大きいものに交換することで効率を向上させる
・有効電力を売電電力容量とすることが可能な場合、最大活用するためにPCSの定格容量を増加させる

【背景】

本コラムを執筆した理由として、増強と刷新は区別される必要があるためです。
なぜ区別する必要があるかというと、現在は3kW以上の太陽電池の増設は「増設した時点の買取価格への変更」を伴うため、事業性を低下させることになりますが、2024年より、太陽電池の増設解禁が検討されており、本来の意味でのリパワリングが可能となります。

(参考) 制度についてはこちらの記事を参照 
※新単価は加重平均で算出されることから、FIT初期の価格かつ当初から過積載率が高い案件だと増強により大幅に単価が下がるため投入コストの回収が難しいことに注意

【最後に】

本記事が皆様の事業のお役に立てれば幸いです。
今後も「業界での注目度や認知度が低いが、意義や価値がある」トピックを取り上げたいと考えています。

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